ファイブ・ウェイ・ポジショニング
「事業はポジショニングが大事だ!」とよく聞くものの、自分の引き出しが限られていたのでポジショニングに関する書籍を読むことにしました。
外国の方が執筆した書籍なんですけど、星野リゾート星野佳路さんが推薦していたこともあり興味を持ちました。
1. ポジショニングも"選択と集中"
ファイブ・ウェイ・ポジショニングでは経営に関わる要素として
- 価格
- サービス
- アクセス
- 経験価値
- 商品
の5つをあげています。
さらにそのポジションを
- レベルⅠ(業界水準)
- レベルⅡ(差別化)
- レベルⅢ(市場支配)
と区分しています。
要素×レベルの組み合わせは何パターンもありますが、そのなかで「選択と集中」をすることこそがポジショニング戦略であると説いていました。
コモディティ化に陥らない企業は、5つの要素全てでレベルを高めようとはしていない、むしろ意図的にそうしないことが大切だということだ。 5つのうち1つでレベルⅢを、別の1つでレベルⅡを、残り3つで業界水準であるレベルⅠを維持することが最適と説いている。限られた資源で何を達成すれば持続可能な競争優位性を保てるのかを把握できるし、そのコンビネーションは数多く想定できるので、各企業の個性や強みを反映することが可能だ。 経営者であれば誰もが直面する〝資源の有限性〟という困難に、「5つのうち3つは業界水準でいい」 というメッセージはとてもポジティブで勇気づけられるものだ。5つの要素のどれを選ぶかによって、その会社の競争分野(市場支配を目指す分野)が決定される。成功している企業はみな、ターゲットとなる顧客が最も高く評価している要素に磨きをかけている。
各要素×各レベルのマトリクスがこちら。これだけ抑えておけば問題ないと思います!
2. ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略の策定方法
自社が5つの要素のうちどれを「選択と集中」するか決断するために、社内外の認識を揃える必要があります。そのためのステップが4つ。
ステップ1:経営陣で書き出す
- 5つの要素のどれで自社が市場を支配していると思うか書く - 自社が差別化に成功していると感じる第2位の要素を書く - 残り3つの要素のうち、少なくとも直接のライバルたちのレベルに達していない、と感じる要素を書く
ステップ2:顧客に聞く
現在の顧客層が、あなたの会社と競合他社をどのように見ているか、そしてファイブ・ウェイ・ポジショニングのマトリックスのどこに各社を配置するか、調べていくのだ。
ステップ3:消費者に聞く
調査対象を自社の顧客かどうかに関わらず消費者全体に広げ、同じ調査を行うことだ。 その際、統計上の妥当性を確保できるよう、幅広い層に調査をしよう。
ステップ4:従業員に聞く
経営陣と同様に。経営陣と従業員で認識の齟齬がないかも確認する。 - 5つの要素のどれで自社が市場を支配していると思うか書く - 自社が差別化に成功していると感じる第2位の要素を書く - 残り3つの要素のうち、少なくとも直接のライバルたちのレベルに達していない、と感じる要素を書く
3. ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略の注意点
1. 「共感できない瞬間」をつくらない
どんな企業にも当てはまる、一般的なルールもいくつか存在する。まず、優先順位をつけるなら、5つの要素すべてを、少なくとも業界の標準レベルに引き上げる活動に力を入れるべきだ。5要素すべてを通して、日々消費者の最低基準を満たせていないとしたら、ブランドに傷がついているはずだ。
HeaRでも候補者体験をあげるためには「共感をできない瞬間」を作らないことを大切にしています。
ほとんどが平均以上もしくは推奨レベルにあるにもかかわらず、ある一瞬の「共感できない瞬間」がすべてを台無しにしてしまいます。
2. 第1位の要素変更にはリスクが付きもの
第1位の要素を変える決断には、リスクがつきものなので、細心の注意を払って行わなくてはいけない。ここ何年も、Kマート、ホリデイ・イン、ビュイック、シアーズ、トランス・ワールド航空、JCペニーをはじめ、多くの企業が苦しんでいるのは、新たに提案した価値に、消費者がなじんでくれないからだ。差別化ポイントである第2位の要素を変えるほうが簡単な上に、リスクも小さい。
ちなみに第1位・第2位の要素を変える目安は、顧客が競合に流れたり今後の成長の見込みが疑わしいと思った時とのことです。
おまけ:5つの要素に対する質問集
自社における5つの要素の現在地を振り返るための質問集がありました。
— 価格編
- 価格で市場を支配したいなら、価格設定について顧客とコミュニケーションを取るとき、公正で適正な価格だと強調しているか?
- 価格で戦うつもりがないなら、競合市場の価格レベルに合わせようと努めているか?それとも、やみくもに市場やカテゴリーの最低価格に合わせているだけ?
- どんな価格戦略を取るとしても、一貫性は大切だ。現在取引している顧客は、あなたの会社の半年前の、もしくは半年後の価格方針を受け入れてくれるだろうか?
- 自社の商品やサービスを前提に、友達に尋ねてみよう。価格設定に関する会社の主張は、彼らにとってわかりやすく、シンプルで、直感的に正しいと感じられるものだろうか?
- どれくらいの頻度で、ライバルの価格設定の状況を客観的に調べているか?
— サービス編
- 顧客1人ひとりのニーズに応えて、商品やサービスを快く、きちんとカスタマイズしているか?
- サービスで差別化をはかっているなら、取引している顧客に、知識や情報を与えているか?
- 店に来る潜在顧客はみんな、あなたから本当に大切にされている、と感じているか?羊の群れのように、顧客をぞんざいに扱っていないだろうか?
- 日常的に顧客と話して、顧客にとって「並みのサービス」「よいサービス」「優れたサービス」とは何か、知ろうと努力しているか?
- 消費者として、競合他社の飛行機で旅をしたり、保険の契約を結んだり、スタジアムの席を購入したりと、ライバルにアプローチしているか?ライバルとしてではなく、1人の顧客として、彼らのサービスのレベルをどのように感じただろか?
— アクセス編
- 取引の相手が企業でも消費者でも、顧客のニーズに対する、真の解決策を提示しているか? たとえば、特別に発送の手配をしたり、顧客があわてて何かを買ってしまう前に、競合他社の価格を確認してあげたりしているだろうか?
- アクセスで差別化できているつもりなら、あなたの会社と取引することが、いかに便利かを自問してみよう。たとえば、メーカーであれば、電子データ交換(EDI)を行っているか? 電子資金決済(EFT)を促したり、注文処理を楽にしたり、相手に合わせて条件をカスタマイズしているだろうか?
- 対面販売なら、顧客は、探している商品やサービスを簡単に見つけられるだろうか? 顧客が、ほしいものに簡単にアクセスできるようにしているか? それとも、店があれこれ勧めて、購入を「誘導」しようとしているだけ?
- ウェブサイトを持っているなら、顧客とリアルタイムでやり取りしているか?それとも、1日に1度返事をするだけだろうか?
- アクセスで市場を支配したいなら、必要とあれば喜んで、顧客のところへ出向いているか? それとも、何としても向こうが来るべき、と考えているか?
— 商品編
- メーカーに勤めているなら、クライアントがあなたの会社の商品を仕入れるのは、消費者にインスピレーションを与えてくれるから? それとも、単に棚を埋めたいから?
- 一番のお客さまがほしがる商品を、どれくらいの頻度で品切れさせている?
- あなたが小売業者か再販業者〔商品やサービスをエンドユーザーに販売する企業や個人。認定販売店という形を取ることも多い〕 なら、あなたが扱う商品は、すべて信用できるものだろうか? つまり、どの商品も消費者から見て、きちんと役目を果たしているか?
- あなたの会社の商品やサービスのおかげで、顧客は新たな自分を思い浮かべて、わくわくできるだろうか?
- ついこれまでの習慣で、気まぐれに商品を選んだり、販促・マーケティング費を使い切ろうと、顧客が求めていない商品まで扱っていないだろうか?顧客がほしがる商品、顧客にインスピレーションを与える商品を犠牲にしていないだろうか?
— 経験価値編
- あなたの会社の社員は、顧客とのどんなやり取りにおいても、敬意を示すよう訓練されているか?そして、その訓練が活きるような、人材の評価基準を採用しているか?
- 顧客を心から気遣っていることを、どんなふうに示している?
- 見せかけの親密さや、差し出がましさではなく、顧客とほどよい親密さを保つために必要な知識を持っているか?
- 顧客に、他では得られない何かを提供しているか?
- 顧客のニーズや懸念を幅広くつかんでいるか?それとも、知っているのは顧客の購買行動だけだろうか?
以上です!
ポジショニング戦略を考える際は、どの要素を尖らせるかが大事と改めて見直すことができました。