ワークマンの"当たり前の基準"を垣間見る

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Created
2020/09
吉幾三氏の「行こう〜♪みんなで〜♪ワークマン!」のCMで有名な作業服専門店ワークマン。 画像を見ただけでメロディが脳裏をよぎります。
 
 
しかし最近はアパレルブランドショップへ変貌を遂げており、コロナ禍にも関わらず20年1~3月の売上高は前年比2桁超えを継続。4月は前年比5.7%増、5月は同19.4%増を記録。 ※参照:ワークマン、コロナ禍でも業績好調の理由は?
 
僕自身はワークマンに馴染みがないものの、「商品を変えずに売り方を変えただけでなぜ2倍売れたのか」のタイトルに惹かれて読んでみることにしました。
 
 

1. 全社員がデータ分析できるよう教育

スタートアップで「全員SQL叩けるようになりましょう!」と言われてるのと同様、 ワークマン社では「全員エクセル使えるようになりましょう!」と号令がかかっているようです。
 
土屋氏はまず全社員を対象に、エクセルの使い方を学ぶ講習を2年ほど続けた。その後、14年10月にデータコムが開発した小売り向けのPOSデータ分析システム「d3」を導入。今では、d3のPOSデータをエクセルにダウンロードし、エクセルの関数を使って需要の変動を読み解いている。分析講習ではこのd3による定型分析、汎用分析と、エクセルを使ったデータ加工、関数の使い方など、業務に必要なポイントに絞って、集中特訓していった。
 
AIが時代の主流になりつつもエクセルにこだわる理由は、思考力をつけるためとのこと。
 
「エクセルがいいのは、自分で考えるようになるからだ」と説く。実は、AI(人工知能)の導入も検討したことがある。確かに便利だ。しかし、土屋氏はAIには欠点もあると、導入を思いとどまった。「AIにはプロセスがなかった。思考のプロセスがブラックボックスになって見えない」。  AIは大量のデータから相関関係を見つけるのは得意だが、ビジネスで必要なのはむしろ因果関係を見極めること。
 

2.リーダーはいつまでも泥臭くあれ

ワークマン社が立て続けに店舗拡大していた時期、「どんな立地ならお客さんが来やすいのか?」「どんな店舗なら商品が売れやすいのか?」をABテストするために、土屋氏が自らフィールドワークをしたという。
 
12年から13年にかけて、土屋氏は時間を見つけては加盟店を巡り、店先に立った。駐車場の利用率を、自らの目で確かめるためである。「例えば、夕方の17時に行ってどのくらいクルマで埋まっているかを観察した。1人で来た場合、相乗りして2人で来た場合、3人で来た場合に滞在時間はどうなるか。そういうデータを自分で取って駐車場の回転率を割り出した。
 
競合調査にも労力を厭わない。 リーダーには職務質問を受けるほどの狂気が必要だなと思いました。
 
出入りするクルマの滞在時間を地道に記録し、「西松屋はなぜあんなにも広い駐車場を持っているのか」と時には他店も分析した。
 
こうした調査を、場所を変えて何度も繰り返した。これもある種のABテストである。駐車場がすぐに満杯になる店もあれば、自転車ばかりで一向にクルマが来ない店もあった。駅からの距離や、周辺の住環境によっても、駐車場に必要な適正台数は変わる。あるとき、あまりに食い入るように駐車場を眺めていたら、変質者と間違われて職務質問を受けた。
 

3. 濃いファンを味方につける巻き込み力

ワークマンは商品開発を社員だけで行わず、ワークマンのファンと一緒に進めています。
ワークマンはその用途を確認するために、SNSを重視する。土屋氏は、そこからさらに一歩踏み込んだ。ネットの書き込みを参考にするだけでなく、インフルエンサーそのものを丸抱えしたらどうか、と思い立ったのだ。
 
ワークマンの開発部隊は、社員だけではない。ワークマンを愛用してやまないブロガーやユーチューバーといったインフルエンサーを「製品開発アンバサダー」に任命し、社員と机を並べて共同開発しているのだ。そして、彼ら彼女らの意見を相当取り入れている。ある意味、完全にインサイダーなんですよ。ワークマンが1年後に何をつくるのか、すべて知っているわけですから」
 
では、そんなインフルエンサーをどうやって見つけているのか。実は広報担当による「目視」だというのです。ワークマンに関する投稿を探し出し、アプローチをかける。先ほどのフィールドワークと同様、泥臭い活動が企業文化として浸透していますね。
 
時には〝捕獲作戦〟に出ることも辞さない。「マスクママさんという、新型コロナウイルスの前からマスクをしているユーチューバーの女性がいて。プロフィールは公開していなかったが、どうも名古屋に住んでいるらしい、と。そこで、名古屋に新店を出したら、必ず来てくれるだろうと思って、『マスクした女性が来たら捕まえてくれ』と広報を送り出した。事前に動画を見てもらって、そこで捕まえたんですよ」マスクママは読み通り、 19年5月16 日の新店開業初日、午前9時ごろに姿を見せた。本人にとっても予想外の対面だったようで、「名古屋中川法華店オープン!マスクママ捕獲される!」とのタイトルでその日のうちに動画を投稿。「マスクを付けて変装していたつもりなのですが、ワークマン本部の広報の方に発見されて捕獲されてしまいました!」とのテロップ付きで、店内の風景をスライドショー形式でリポートした。
 

4. ライバルをつくるPR / オンリーワンのPR

話題を呼ぶプレスリリースを作るのが上手いワークマン社。 「ライバルをつくること」「オンリーワンの施策を考え抜くこと」が重要と説いてます。
 

— ライバルをつくったPR

「3月下旬か4月上旬に『WORKMAN Plus』の唯一の競合先であるフランスDecathlon社(売上1.3兆円)が大型店を阪急西宮ガーデンズに出店します。当社はこれに先立つ3月21日にららぽーと甲子園に『WORKMAN Plus』を出店し、同日に路面の大阪水無瀬店を『WORKMAN Plus』に改装してDecathlon社を迎え撃ちます。両SC店の距離はわずか3kmですが、先手必勝で大規模な販促を行います。2店舗だけではDecathlonの大型店にかなわないので、関西地区のワークマン120店舗でアウトドア売場を強化して包囲網を作ります。1対120の数の優位で『西宮戦争』を制するつもりです」。
 

— オンリーワンのPR

ワークマンは東京・新宿のルミネゼロを貸し切り、秋冬の新作発表会を開いた。ただの発表会ではない。「過酷ファッションショー」という名の、サブタイトルがついていた。照明が薄暗く変わり、場内は〝天変地異〟に見舞われた。視界を遮るほどの濃霧、容赦なく襲いかかる風、土砂降りの雨、季節外れの雪。悪天候にもひるむことなく、ランウェイを進むモデルたち。中央には、なぜか雲梯が置かれ、果敢にぶら下がった男性モデルは、あまりの雨の強さに、思わず手を滑らせた――。実は、舞台袖に暴風を吐き出すブロアーや降水機、降雪機を持ち込み、考え得る限りの荒天を再現していたのだ。過酷な環境に強いワークマンを、目に見える形で発信した、実にユニークな試みだった。
 
元になったのは、TBSのテレビ番組「SASUKE」である。筋力自慢の猛者たちが、目の前に立ちはだかるさまざまな障害物を、身一つで乗り越えていく、究極のサバイバルバトルだ。「SASUKEみたいに途中で池が置いてあったり、激しい動きを取り入れたりすると、うちの機能性が結構アピールできるんじゃないか」。極め付きは、タイトルだ。「 日本初!?新宿ルミネゼロで大雨・大雪・暴風が登場する『過酷』ファッションショーを開催」と銘打ったが、「日本初かどうか分からないので、はてなを入れときゃなんとかなるかなという勢いだった。正直、過酷ファッションショーって受け狙い、話題づくりなので。
 

5. 戦うべき敵と戦わない敵を明確にしている

「とにかく競争したくない」と語る土屋氏。戦略的に競争をデザインしていたのが印象的でした。
 
誰も気づいていなかった市場の隙間を見つけて徹底的に攻め込むのが、ワークマンがワークマンたりうる理由である。40年間も作業服専門店として独走してきたDNAが、今なお生きているのだ。土屋氏はこう言い切る。 「うちは、とにかく競争したくない会社だから」。負ける勝負はしない。競争して負けるぐらいなら、最初から勝負しない方がマシだとさえ考える。
 
土屋氏はワークマンプラスを出店したときから「『ユニクロアウトドア』や『ユニクロスポーツ』が現れたら撤退する。うちには第2弾、第3弾がある」ときっぱり話していた。その第2弾、第3弾というのが、ワークマンレディースであり、ワークマンシューズであり、ワークマンレインだったのだ。
 
土屋氏は「そもそも、配送費を負担しているようでは、Amazonに勝てない。Amazonは、小手先の努力や工夫で勝てる相手ではない。負けない仕組みで勝負するしかない」と常々説く。打倒Amazonのスローガンは3つある。①Amazonに定価で負けない②Amazonに販促費で負けない ③Amazonに配送費で負けない
 
優良企業の"当たり前の基準"を知ることで、事業や組織へのコミット強度を見直すことができました。